- 作者: 想田正
- 出版社/メーカー: 青弓社
- 発売日: 2010/12/01
- メディア: 単行本
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wikipedeiaによれば
クラシック音楽の豊富な体験・知識をもとに、音楽の持つ魅力や深い洞察をすぐれた感覚的な言葉で表現、日本の音楽評論において先導的役割を果たす。音楽のみならず文学や美術など幅広い分野にわたる評論活動を続け、日本の音楽評論家としては初の個人全集が刊行されて、第2回大佛次郎賞を受けた。
と評される人物で、日本において「音楽評論」という分野を確立したパイオニアとしての不滅の足跡を残している。当然ながら、クラシック音楽好きだけではなく、既述したように大学受験現代文のテキストにも使われるような文章を書く人物だ。
そうした吉田が、その滲み出るような教養と格調高い文章で読者を魅了するA級グルメだとすると、本書で紹介される宇野功芳は良い意味で「究極の」B級グルメのような評論家であろう。(宇野自身は国立音大声楽科卒)
父親が漫談家の牧野周一であったからだろうか、宇野は口語体の歯切れの良い文章を書く。客観的であることをかなぐり捨て、主観的に自分の良いと思ったモノは世界を敵に回しても良いとハッキリと言うところにとくちょうがあるだろうか。(それが評論家として適切かどうかは別問題なのだが)
とはいえ、指揮者のクナッパーツブッシュや朝比奈隆、ピアニストのハイドシェックらが日本のクラシック音楽界において一定の知名度を得たのは宇野の存在なくしては語れないだろう。
本書はそうした宇野の音楽観や評論観を掴もうという試みだ。
著者は宇野の評論をある程度の時期に区切ってその特徴を捉えると共に、一連の著作から宇野の音楽観を提示しようとする。
宇野評論の特徴はそうした「自分の理想とする音楽観」を措定し、それに対して演奏(コンサートであれ、CDであれ)がどのようになされているかで良し悪しを決めている。
まあ、当人が存命中であるにも関わらず、こんな本が出るという事実が、宇野自身に対する毀誉褒貶を物語っているようにもおもう。
ただし、評論家の批評であれば、もっと資料の扱いに緻密である必要があるだろう。