あれぐろ・こん・ぶりお 2楽章

備忘録も兼ねて。日記なんて小学生の時宿題で課された1年間しか続かなかったのですが、負担にならないように書けば続くものですね。

舞台版 海辺のカフカ

海辺のカフカ (上) (新潮文庫)

海辺のカフカ (上) (新潮文庫)

「中田は、あまり頭が良くないのであります」

 蜷川幸雄の演出で「舞台版 海辺のカフカ」を観た。千秋楽の前日である。
 高橋努木場勝己がいい味を出す、というよりも「これぞ芝居」といった貫禄と安定感だった。そこに引用したセリフが今でも頭を離れないほどのインパクトをもっている。
 海辺のカフカの独特な、というかユニークな世界観をどうやって舞台にするのだろうと思っていたけれど、見事に表現している。去年の夏に観た「身毒丸」と同じような舞台後方から様々なパーツがめくるめく登場させて、消えていく。そして保育器のようなガラスケースの中に柳楽扮するカフカ少年が入っている。
 つねに、そのガラスケースを使った舞台装置が効果的に利用されている。舞台上でさらに異空間に分離されるようなその演出もおもしろい。
 柳楽優弥はさらに伸びる余地がある、というと辛口に聞こえるかもしれないが、周りがなかなか光る演技をしていたからちょっと存在が薄くなってしまった。柿澤勇人は今回初めて演技を観たが、カラスをうまく演じられていたと思う。田中裕子はそこはかとない美しさというか、事切れそうなその佇まい感じられる。そして、繰り返しになるが、木場と高橋が「これが芝居」という舞台俳優らしい仕事を見せてくれた。
 4時間があっという間に過ぎた。圧巻である。