- 作者: 薬師院仁志
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2011/02/17
- メディア: 新書
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むろん、二つの歴史は相互に関係し合っているし、それが1冊の新書で関係づけられて説明したモノは今までなかったから、本書の存在は貴重である。政治思想史・社会思想史・労働史的な分野に関心がある人は当然の押さえるべきだし、広く社会科学に興味のある人は読んでおいて損はない本である。本来であればこうした素養は高校世界史を丹念に学習すれば身につくモノであるが、残念ながら昨今のTV知識人や政治家たちを見るとそれを期待するのは難しい。
本書において社会主義と共産主義を対比的に説明し、特に西ヨーロッパにおいて広く市民の支持を得た社会民主主義思想をベースに話は展開されている。つまり、「社会主義の誤解を解く」とは日本において社会主義=ソ連・中国・北朝鮮的な「怪しい」思想のように思われているが、ドイツ社民党、フランス社会党、イギリス労働党など、「社会民主主義思想」のバリエーションがあって、アメリカ的なグローバリゼーションが広まって貧富差も拡大しているけど、それだけが総てじゃないよ、というのが本書の目的だろう。
運動史に重点が置かれているため、じゃあ、「社会民主主義思想」って何か?ということには答えていないし、マルクスやエンゲルスの思想も共産主義「だけ」に結びつくモノではない。しかし、それを政治思想が専門でない著者に求めるのはいささか厳しいだろう。たとえば、イギリスのフェビアにズムを新書で知ろうと思えば名古忠行『イギリス人の国家観・自由観』 (丸善ライブラリー) を読むと、少しは理解が進むと思う。