あれぐろ・こん・ぶりお 2楽章

備忘録も兼ねて。日記なんて小学生の時宿題で課された1年間しか続かなかったのですが、負担にならないように書けば続くものですね。

藤原帰一『戦争の条件』

戦争の条件 (集英社新書)

戦争の条件 (集英社新書)

 TVメディアにも時々登場する、国際政治学が専門である東京大学・藤原教授による著作である。雑誌に連載していたコラムに書き下ろしを加えて「一般化」「抽象化」された国際関係上の紛争条件について様々な角度から問題を考えさせるきっかけを作ろうとしている本だと言える。もっと専門的な内容を期待すると肩すかしを食らってしまうが、それは『国際政治』(放送大学教材)と併せて読むと、本書が問題提起をしている射程はものすごく広く、また、深い洞察がなされていることに驚くはずである。
 中公新書から『国際秩序』が出ていて、それは戦力均衡論による国際秩序の安定からの国際関係史的な側面が強かった。それでいえば、同書で紹介されている、高坂正堯坂本義和との論争のうち、高坂的な視点が強いと言えるだろう。(ただし、均衡や協調の体系もある程度の文化や文明の共有などが歴史的には前提とされていた。)それに対して、この本は坂本的な系譜に属するといっても良いだろう。(実際、坂本義和から藤原帰一の流れだし)
 非常事態において軍事的な選択肢は否定することはないが、多くの場合、軍事的な選択肢をとった方がカタストロフィになりがちであるという、リアリスティックな認識を持つからこその、問いかけに、思考をめぐらせることは国際政治を考える上では必須ではあるまいか。
 社会科学に興味のある人は是非一読されたい。