あれぐろ・こん・ぶりお 2楽章

備忘録も兼ねて。日記なんて小学生の時宿題で課された1年間しか続かなかったのですが、負担にならないように書けば続くものですね。

彩の国シェイクスピア・シリーズ第33弾「アテネのタイモン」

アテネの貴族タイモン(吉田鋼太郎)は執事フレヴィアス(横田栄司)の助言、哲学者アペマンタス(藤原竜也)の皮肉を無視し、誰にも気前よく金品を与え、ついに破産。友人たちが自分の金目当てだったことが分かり、すっかり人間不信に陥る。森に引きこもるタイモンは、復讐のためにアテネを滅ぼそうと蜂起した武将アルシバイアディーズ(柿澤勇人)に掘り当てた金を与えるが……。

 さいたま芸術劇場でシェイクスピアアテネのタイモン」の千秋楽を観た。蜷川幸雄による全作品上演がゴール間近にして絶たれてしまったが、後を継いだ吉田鋼太郎によって期待通りの仕上がりを見せていた。とにかくカロリー満点の演技だ。
 全体的な感想は良い意味で「分かりやすい芝居」だ。今までのこのシリーズだと(蜷川の趣味なのだと思うが)ちょっと一捻りしたような、余白を残すようなところはなく、セリフも演技も非常に自然で正統派。それでいて、幕前から舞台上に役者が上がって準備するあたり、蜷川のオマージュを感じる。
 全体を通して「蜷川幸雄シェイクスピア」としての統一感を崩さずに、そのベースの上で吉田鋼太郎がこの世界を作っていったのだろう。ところでこの芝居の場面転換の難しさをどう表現するのかは気になったが、引枠?を駆使することで解決していた。ここは蜷川ならどうしたか?ちょっと気になった。
 個別の演技では吉田鋼太郎の抜群の安定感と柿澤勇人のストレートな演技が特に印象的である。柿澤アルシバイアディーズのダイナミズムある芝居は正面から感情がぶつかり、役のキャラクターも相俟って昇華されていた。横田英司は観ていて安心。こういう執事役にもハマるあたり芸達者である。
 あと藤原竜也のちょっと無駄遣いとも思えるアペマンタス役だが、吉田タイモンとやり合うには藤原は適任だと思う(個人的にはこの系統の役が最近多いので正統派ヒーローも観てみたい。個人的にはシェイクスピアにはこの話の後半手抜きだろうと思うが、あっという間の3時間だった。
 なお、千秋楽だからか、吉田鋼太郎からの決意と思いが聞けたのは良かった。残念なのは、この公演を楽しみにしていた我が家のグランドマザー、月初めからの体調不良が回復せず、チケットを買ったのに泣く泣く断念していたところ。次は元気になって観に行くぞ、と言っていたのでちょっとお預け。

映画『否定と肯定』


 有楽町のシネマズシャンテで上映中の『否定と肯定』を観てきた。
 2000年に実際に起こった歴史学者vs.修正主義者の裁判をもとにした映画だ。
 ホロコースト、特にアウシュヴィッツ否定論を唱えるイギリス人作家、D・アーヴィングをユダヤ歴史学者、デボラ・リップシュタット(エモリー大教授)が著書で否定論者と批判したことに端を発する。
 もちろん、客観的に見た場合、アーヴィングが否定論者で修正主義者でレイシストなことは疑い得ないのであるが、彼はリップシュタットにより名誉を毀損されたと被告に立証責任が課せられるイギリスで裁判を起こす。詳しくは映画を見てもらえば良いんだけれど、歴史修正主義者の取る手法は万国共通なのだなぁ、と。それゆえに日本の修正主義に対する対応への一つの参考にもなると思う。
 しかし、差別主義者の歴史修正主義のへの対応は途方もなく大変だと言うことがよく分かる。ある意味でデマのコスパは抜群なのだ。事実の意図的な誤読、曲解、ホロコースト生存者へのセカンドレイプ、あまりにも日本の言論状況と相似すぎて、ガッカリ感すらあった。
 そして、最後までホロコースト否定論を止める気が無いアーヴィングを見ながら、あれは信仰というか病気なのではないかという気すらした。例を挙げているけれど、地球は丸い、プレスリーは死んでいる、という事実を否定する人に、万人が納得する説明をしたとしても、否定者は納得しない。この場合、この人の思考回路はどうなっているのだろう。純粋に分析対象として気になるところだ。その意味で頭を抱えた映画でもあった。

都響スペシャル 第九

 都響大野和士による第九演奏会@東京芸術劇場。今回は2階席前方だったが、オケと合唱が絶妙にミックスされ大正解だった。サントリーよりずっと良いな。演奏も推進力はあるが決して軽くならない大野のシャープな音作りが冴えていたと思う。なんと言えば良いのかな、音が鋭いんですよね。
 そして、対向配置の都響も美感を失わず、かといって迫力不足になることもなく、「音楽的」とでも言うのかな、ともかく、そういった様相だった。あと、例年の事ながら二期会合唱団の素晴らしい歌声。都響は合唱が上手いから聴いていて楽しい。ここはやはりプロでないと!
 都響の第九と言えば、フルシャがブッキングして、急遽、インバルが代打で振ることになった一昨年の第九は実演の中ではbestの出来だった。あの演奏は「歴史の中の巨匠」たちと比しても充分張り合えるような完璧な演奏だった。あんな実演はもう一生無理かも知れない。録音もしてなかったんだよな−。

「誰か席に着いて」を観た。

田辺誠一木村佳乃片桐仁倉科カナ出演。未来どころか目の前の現実で精一杯な大人たちへ倉持裕が豪華キャストで贈るコメディドラマ!
<ストーリー>
芸術家の活動を支援する小原芸術文化財団。その創設者の孫娘の織江と夫の哲朗、織江の妹の珠子と夫の奏平が、助成対象者を決める選考会に集まる。活発な議論をしつつも、四人はそれぞれ別の問題で頭がいっぱい。
シナリオライターである織江は、奏平が気まぐれに書いた脚本を「盗用」している。その奏平は財団の資金を使い込んでいる。哲朗はかつて関係を持った珠子との復縁を願っている。その珠子は姉に対する罪悪感に苦しみつつ、育児によって休止せざるをえなくなったダンサーとしての立場に不安を覚え、自らを助成対象者の枠にねじ込みたい。
問題解決のためにたびたび中座する四人。誰かが戻ると誰かが立つ。一向に決まらない「有望なアーティスト」。芸術と我欲の間をせわしなく往復する男女の喜劇。

 有楽町・シアタークリエでやっている「誰か席に着いて」を観てきた。木村佳乃田辺誠一といった華やかなキャストに軽妙な会話がテンポ良く繰り広げられるコメディだった。もっとも、「えっ?そこで終わるの?」というあたり、謎解きが必要な芝居だとも言えるけど。
 ちょっと忙しいので、もうちょい詳しい感想は後日。