必ずいる、「○○派」〜『アルスラーン戦記3・4』
落日悲歌・汗血公路 ―アルスラーン戦記(3)(4) (カッパ・ノベルス)
- 作者: 田中芳樹,丹野忍
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2003/05/21
- メディア: 新書
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田中芳樹の作品に限らず、小説一般に言えることですが自分は「登場人物の誰々が好きだ」的な傾向はありますね。
でも、田中作品の場合、主役は主役でいるんだけれど、脇役のキャラが立っている&敵味方入り乱れてたくさんの登場人物が出てくる為に、「自分は、○○が好きだ」といった傾向が強いように思われます。なんせ、目次より前に主要登場人物一覧があるもんな。
アガサ・クリスティの推理小説みたいだ。
この線でいくと、アルスラーンが好きだという人は少なくて、それよりもキャラが立っているダリューンやナルサス、あるいはギーヴあたりに人気が集中しそうな気がします。
かわいそうだな、アルスラーン。主役なのにね。
田中作品には作者のとりわけ政治的主張が登場人物を通じて語られることが少なくないんですが、それが現代を舞台とする創竜伝では露骨すぎるものの、中世を舞台とするアルスラーン戦記では後景に退くため、安心して読めます。
ここでのキーはアルスラーンの正統性でしょうか。「正統性」は「せいとうせい」と発音されるがゆえに政治学では「政党制」と区別する為にあえて「legitimacy(レジティマシー)」と呼ぶことが多いです。
だから、よく政治討論番組なんかで(学会や研究会の報告とかでも)「legitimacy」って言葉がよく使われるのですが、それはこの「正統性」って意味で。
マックス・ウェーバーによれば「正統性」には三種類あるそうです。
①伝統的支配
②カリスマ的支配
③合理的支配
①は昔から決まっている物事・慣習はそれだけで正統性があるというもので、現在の日本で分かりやすく言えば天皇家はまさに伝統的支配に分類されるものでしょう。
なんで天皇が天皇たるのか、といえば、それは大昔からそうだったから。と言う他ありません。
そんなわけで、アルスラーンが王太子としての正統性を持ちうるのはひとえに国王アンドラゴラス三世の、もっといえば、パルス建国の父・カイ・ホスロー以来の血を引き継いでいるからに他ならないというわけです。
この後の展開で、またこれに絡めてちょっとだけ話しますが…。
でも、表向きはシンドゥラ国のラジェンドラのキャラに押されまくっているのがこの間の印象でしょう。
四月を過ぎて、五月病になる人が出てくるとはおもうのですが(特に新入生とか新卒社会人とか)、ラジェンドラのようなスーパーポジティブシンキングでいられればそんなことないのにね。と、どーでも良いことを思ってしまいました。