あれぐろ・こん・ぶりお 2楽章

備忘録も兼ねて。日記なんて小学生の時宿題で課された1年間しか続かなかったのですが、負担にならないように書けば続くものですね。

ホントにあった話

起立せぬ親と来賓調査 君が代
式典で徹底図る
 埼玉県戸田市の伊藤良一教育長が今月十三日の市議会で、同市立小中学校の卒業式や入学式の君が代斉唱の際に起立しない来賓や保護者について「はらわたが煮えくりかえる」と答弁、調査する方針を示していたことが分かった。伊藤教育長は十九日、本紙の取材に対しても起立しなかった来賓の氏名や人数を調査する意向をあらためて表明。起立の徹底を図ることを明らかにした。


 伊藤教育長は、本紙の取材に対しても「表現は適切でなかったかもしれない」としながらも「式典は規律や礼節を学ぶ大切な場。来賓らには子供の模範となってもらいたい」と不起立を批判。市立の全小中学校長に、今春の入学式・卒業式の君が代斉唱で起立しなかった来賓の氏名や保護者の人数の報告を求める考えを明らかにした。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/sya/20060620/mng_____sya_____007.shtml

東京新聞 2006.6.20 朝刊


 いくら「独特の教育観・国家観」を持ったヒトでも、国政レベルになれば「独自の教育観・国家観」と「民主主義の常識」のバランスの上に立って発言するものだけれど、地方議会レベルになると、「民主主義の常識」に欠落した人物が、しばしば自治体の長ないしは教育長になることがある。そーした人間がトップに就くとろくでもないことばかりだ、という格好の例。
 一般大衆レベルであれば、そーいったヒトがいたとしてもそれはそれで構わないのだけれど、自治体首長や教育長がそーいった「マトモ」な感覚がない人間だと大変なことになる。つくづく戸田に住まなくて良かった。
 この伊藤教育長は「君が代の斉唱を徹底化する自分」にこそ愛国心がある、自分こそが一番の愛国者だと思いこんでいるのだろうが、それはいわば自己陶酔しているのであり、そこには愛国心というもの以上に強烈なエゴイズムが存在しているのだろう。
 本来的な日本の愛国心はそのように絶叫する類のものではない、と思うのだが。


 日本も含まれる現在の政治体制を定義すればそれは「自由民主義体制」だということができるだろう。この自由民主義体制はその名の通り、「自由主義」と「民主主義」というそれぞれ違った二つの考え方によって構成されている。
 今回は自由主義に限ってになるけれど、そもそも自由主義の原則というのは「そのヒト個人の自由を出来る限り尊重する」ことにある。もちろん、そこには限度があって、それは「他者被害の原則」、つまり他人に害を与えない範囲内という留保がつく。
 そうした自由主義の原則にあって思想信条の自由というのは最も尊重すべきものだとされる。思想信条はその人の内面的なものであるし、アイデンティティの拠り所でもある。
 宗教もそうだけれど、自分の信じている理念ないし世界観が否定されるということは、人格そのものを否定することになり、そのヒトは今までと同じようには生きていけない。社会は深刻な価値観をめぐる対立を生み、「正統」をめぐる果てしない闘争が始まってしまう。なまじ、抽象的な「思想や生き方」に関わることなので、その闘争は熾烈きわまりないものになる。実際にヨーロッパでは価値をめぐる対立から戦争が絶えなかった。その反省が自由主義に結びついたと言える。だから、このことは仮定の話、ではなくて実際にあった話ということで重みがあると思う。


 だから自由主義では「他の人に危害を与えない限り、その人の自由を最大限認めましょう」ということになる。もう少し具体的に言えば「僕はあなたの考え方は100%受け入れないけれど、あなたがそうした考えを持ったり表現する自由は100%認める」ということだ。


 今回の記事で言えば、たとえ、君が代斉唱の時に座っていようが歌わなかろうがそのヒトに君が代を強制することは出来ないと考えるのが妥当だろう。歌っている最中に大声で妨害するなら、それは他者危害の原則が適用されるけれど、歌わないことをもって他者危害とはならない。
 それに、卒業式の主役は卒業生であって、教育委員会でもなければ政治家でもない。式典は規律や礼節を学ぶ場というが、起立しないこと、歌わないことが「規律や礼節」を学べないコトにはならないと思うが…。
 規律礼節は年1度の卒業式で学ぶものなのか、むしろ、普段から学ぶものではないのか。年1度の式典でしか学ばないのであればむしろその方がおかしいだろう。もっとも、議会の答弁で「はらわたが煮えくり返る」と言ってしまうだけの常識のない教育長だから何を言っても無駄な気がするけれど…。

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