読売日本交響楽団 第120回東京芸術劇場マチネーシリーズ
2010年3月20日(土) 14:00開演
会場:東京芸術劇場
指揮:スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ
◆R.シュトラウス:
交響詩〈ドン・ファン〉
◆ スクロヴァチェフスキ:
Music for Winds(読売日響・ミネソタ管他共同委嘱作品、日本初演)
◆シューマン:
交響曲第3番〈ライン〉
今秋で御年87歳になる「Mr.S」こと、スクロヴァチェフスキ。読響常任指揮者としての3年間の任期を終え、その集大成とも言うべき月である。先週がシューマンの高校曲第1番、今回が第3番、そして来週はブルックナーの交響曲第8番なわけだけれど、管理人の都合でこれだけしか聴けなかった。3月はどーなるのかよく分からない月だけに、聴くことが出来たのはよかったんだけれどね。
スクロヴァチェフスキは今回も元気だった。下手から大きく腕を振りながら指揮台へと歩いてくる。今回の演奏会も前プロ・後プロで90分ほどあったが、椅子に座ることも(そもそも椅子は置いてない)、指揮台へ寄り掛かることもせず「矍鑠」とした指揮ぶりだった。
R.シュトラウスはオーケストレーションの絢爛豪華な響きと言うよりも、充実した響きだ。スクロヴァチェフスキは極めて求心力をオケに対して発揮し、音楽を作り上げていく。思い切りのよいダイナミズム、輪郭のハッキリとした表現である。
自作の「Music for Winds」は管楽器と打楽器による音楽。プロコフィエフの「ロミオとジュリエット」からの差し替えである。もちろん初めて聴いた曲なので、新鮮だったが、ザックリとした感想は、後半(3,4楽章?)でのオスティナートや、進行はストラヴィンスキーやショスタコーヴィチを何となく感じさせる。伊福部とも遠くない。そんな感じだった。
後半のシューマンは手練の限りの演奏。管理人は3階席だったから今回はよく見えた。てっきりスクロヴァチェフスキは作曲家でもあるから、シューマンの交響曲をアレンジしてしまうんじゃないかなぁ…なんておもったけれど、予想は大ハズレ。マーラーに代表されるように、シューマンの交響曲は全曲に渡って終始吹きまくる管楽器をどう処理するのか、というのが指揮者の見識でもある。マーラーはダブって演奏される管楽器をばっさりとカットしてスッキリとした響きを作り上げ、その後の指揮者も同じような傾向があった。管理人の良く聴く、シューリヒトやパレー、セルの演奏も、自分のエディションを持った演奏である。
3階席からみると、管楽器は終始吹かれていた。でも、中間色の、絵の具を厚塗りしたようなシューマントーンはあまり感じさせず、推進力のある演奏だった。恐らく、スクロヴァチェフスキは徹底して、各楽器間のバランスをとったものと思う。その結果、判断を聴衆に預ける、というのではなく、「コレが私のシューマンだ」というシューマン像を提示していた。
どーしたいんだかよく分からない演奏を散見されるなか、今回の演奏会は指揮者の解釈によるハッキリとした音楽像が、説得力のあるカタチで描かれていたと思う。
- アーティスト: スクロヴァチェフスキ(スタニスラフ),シューマン,ザールブリュッケン・カイザースラウテルン・ドイツ放送フィルハーモニー管弦楽団
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