ミュージカル「ウェンディ&ピーターパン」
代打で渋谷オーチャードホールで上演している「ウェンディ&ピーターパン」を見てきた。
話の大枠は「ピーターパン」をなぞりつつ(当たり前だけれど)、21世紀の今にアップデートした解釈だった。もっとも、このあたり演出で苦心したのかもしれない。原作にある「女の子」「お母さん」からウェンディを解放したかったと思うのだけれど、母親もタイガー・リリーももうひと息、陰影をつけて物語を深められそうに思った。なのでフック船長の哀愁とか色々あるんだけれど焦点がボヤけてしまった感じだった。
しかしながら、役者は全く素晴らしい。ウェンディ黒木華の焦りや苛つき、意志の強さ。ティンク富田望生の幼さゆえの嫉妬や意地の悪さ。ピーターパン中島裕翔のしなやかな動きと大人と子どもの揺らぎ。宮崎駿の映画が「子どもが少女(少年)になる瞬間の話」だとしたら、ピーターパンはそこを自覚してしまったがゆえの選択の苦しさ、が後半のテーマであろう。
そのあたりをフック堤真一が飄々と演じていたのも良い。
「晴天を衝け」の平岡円四郎もそうだが深刻ぶらないけれど余韻を残す芝居はうまいなぁ、と思った。
セットは豪華でロンドンの子供部屋→ネバーランドの大樹→海賊船と舞台美術も凝っている。ホントはもっと船はでかくしたかったんだろうな,とも思った。あの芝居をするにはあの舞台は手狭だったなと思う。
あと、2000人弱収容のオーチャードホールは芝居をするにはハコが大きすぎるなぁ。とも思った。
しかし、そんなハンデをものともせず、縦横上下に演じたキャストは立派だった。善き哉。