カラッとした詩情?@フレッシュ名曲コンサート ロシアの甘美な旋律 〜外山啓介の奏でるラフマニノフ〜
2008年11月1日@調布市グリーンホール
チャイコフスキー:「エフゲニー・オネーギン」よりポロネーズ
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番 ハ短調 作品18
チャイコフスキー:交響曲第6番 ロ短調 作品74 「悲愴」
曽我大介(指揮)
東京フィルハーモニー交響楽団
外山啓介(ピアノ)
オーソドックスなプログラムを手頃な値段で聴ける機会があったので、足を運んで調布まで。調布駅前はやや寂しい。しかし、人口では吉祥寺のある武蔵野市よりも大きいのだから良く分からないモノだ。
もともとフレッシュ名曲コンサートは
東京文化会館では、都内区市町村と共催して都内各地で「フレッシュ名曲コンサート」を開催しています。東京音楽コンクール出身の演奏家(☆印)をはじめ、新進気鋭の若手演奏家が各回必ず登場しますのでご注目ください。
というコンセプトらしく、東京文化会館を中心に行っているのだけれど、目黒パーシモンホール(ここもなかなか良いホール)や杉並公会堂(ベーゼンドルファー置いてあるし)などでもコンサートがある。今回はたまたま調布市グリーンホールなのである。
エフゲニー・オネーギンからして快調な出だし。この序曲も有名ですよね。もっともオペラは聴いたことがない(どうもオペラは言葉がネックになって聴きに行くインセンティブがなかなか沸かない。もっともチケット代もあるけれど)。
ラフマニノフのピアノ協奏曲のソリストは管理人は2回目の外山啓介。2年半前に聴いて以来だからしばらくぶりだ。その間に、そのルックスも手伝い世間の注目を急速に浴びて、一躍人気ピアニストになったといえる。まだ20代半ばのハズだけれど、すでにCDを2枚リリースするほどの人気ぶり。その時の様子は↓
新しい波の到来〜外山啓介ピアノ・リサイタル あれぐろ・こん・ぶりお
冒頭の和音はデリケートに、しかし、意志の強さを感じさせる。管理人は二階席の前列で聴いたが、2年半前に聴いたときと同様に外山のピアノはクリアな音を出す。この曲の第一楽章は実演で聴くよりもCDで聴いた方がピアノの音がオケの音に埋もれないで済むから良い、なんて言われるが「さにあらず」、オケの伴奏の中でもピアノのアルペッジョがハッキリと聞き取れる。
そして劇的な盛り上がりをみせる展開部ではピアノはぐっとテンポを落とし、大きなスケールと伸びやかな力強い打鍵を聴かせてくれた。非常に健康なラフマニノフである。
第二楽章は繊細なピアニズムである。詩情が足りないというか、もともと演奏自体が健康な繊細さなのだ(外山のピアノも曽我の指揮も同様に)。リヒテルにあるような、どこか病的な、影のある感じではない。そのあたりが好みが分かれそうである。とはいえ、リヒテルのような演奏はそう滅多に出会えるタイプのものではない。
第三楽章も第一楽章と同じコトが言える。その恵まれた体躯から弾かれるピアノは大きなダイナミズムとクリアな音だ。第三楽章ではその音量とスケールの大きさというのは重要な要素だから、その意味では満足いくものだと思う。オケもそうした音に極めて親和的だから、カラッとしたラフマニノフである。
聴きながら思ったけれど、(そりゃ、この難曲につきものの若干のミスはあったものの)全国ツアー等をこなし、舞台慣れしてきただけあって、安心して聴いていられるピアニストになったなぁ…と非常に驚いた次第。やっぱり、舞台をこなすこと、というのが演奏家では非常に重要だということが目に見えて明らかに分かったのは興味深い。
- アーティスト: リヒテル(スヴャトスラフ),ラフマニノフ,チャイコフスキー,ヴィスロツキ(スタニスラフ),カラヤン(ヘルベルト・フォン),ワルシャワ・フィルハーモニー管弦楽団,ウィーン交響楽団
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ダンプカーのようなピアノの音にただ唖然とするばかり。(ちなみにラフマニノフ自身が自作の演奏をしているモノもあるけれど、実は非常にあっさりしている)
チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番&ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番
- アーティスト: ルービンシュタイン(アルトゥール),チャイコフスキー,ラフマニノフ,ラインスドルフ(エーリヒ),オーマンディ(ユージン),ボストン交響楽団,フィラデルフィア管弦楽団
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後半のチャイコフスキー。
若干イヤな予感がしていたが、的中してしまったコトがいくつかある。
一つ目は、ピアニスト目当ての聴き手が結構いて、後半のチャイコフスキーでは夢の中にいっている方々(若い女性が多かったが…)がそこそこな数、見受けられたこと。二つ目は第3楽章のスケルツォ(→行進曲)が終わったときに拍手とブラヴォーが出たこと。もっとも、第3楽章から第4楽章まではアタッカで演奏せよ、という指示は出ていないのだが、ここで間を空けると緊張が途切れやすいので、金管の調子が整ったらすぐに4楽章に入りたいところだと思う。でもねぇ…恐れていたとおりの拍手とブラヴォーである。
得意になってやってるヤツいたもんな。はぁ…。
三つ目はこれも恐れていたことだけれど、フィナーレのコーダ、つまり8部休符にフェルマータが付いているところだけれど、やっぱりここでも拍手が出ちゃった。今年のアタマにも同じような事件があってエントリに書いたけれど、ここは休符までが音楽なので、このタイミングで拍手をするのは完全なフライングである。何人か慌てて拍手を止めてたけど、一人、意に介さず拍手し続けたヒトがいたな。まぁ、この手のコンサートでは仕方のないことなんだけどね。(しかしなぁ、定期じゃ悲愴取り上げることはないし、難しいところだ。マチネーとかで聴くしかないのかな)
演奏は第一楽章のファゴットが非常に名演。曽我は、そんなにバスを強調した音作りをしない(その意味で、ブーレーズと同方向の響き。中高音のアンサンブルというところか)。 その辺りが、ロシア・ロマンティズムを求める管理人からすると物足りない。ただ、まだ若いだけあって、非常に良い意味で「外連味ある」演奏である。逆に、チャイコフスキーだからもっと主観的に演奏しても面白いと思うのだけれどね。その辺に目を瞑れば、テンポ設定やダイナミズムなかなか適当で、聴いていて楽しかった。
即物的というか、直線的な厳しさすら感じさせるのがムラヴィンスキー。確かに、当時のレニングラード・フィルは超絶的に上手すぎる。
- アーティスト: モントゥー(ピエール),チャイコフスキー,ボストン交響楽団
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