会場:東京文化会館
指揮:マーティン・ブラビンス
ピアノ:上原彩子
プロコフィエフ:歌劇「戦争と平和」序曲
チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第2番 ト長調
プロコフィエフ:交響曲第5番 変ロ長調
先月の記録を今さらつける。
夏明けの都響定期公演。今回のお目当てはチャイコフスキーのピアノ協奏曲第2番だ。実際、実演で聴くのは今回が初めて。チャイコフスキーのピアノ協奏曲は第1番が空前絶後の有名曲であって、そもそも第2番があること自体が知られていないのだけれど、ソリスト上原彩子の希望もあるらしく、今回プログラムにのったようだ。
インタビューによると上原が中学生の頃、ピアノの先生に教えてもらったのがきっかけだったらしい。その後も、機会のあるごとにオーケストラに打診していたらしいのだが、なかなかプログラムに載らなかったようだ。確かにマイナーな曲だからレパートリーにしないんだろうね。
だから、上原自身にとっても実演は初めてらしい。
けれども、一聴してピアノ協奏曲第1番にくらべてもチャイコフスキーの成熟度は増しているような印象を受けた。第1、第3楽章は、リストやラフマニノフやのような華やかなオクターヴが連続するなど、非常にダイナミックな音楽である。
ユニークなのは第2楽章かもしれない。ここではピアノ協奏曲と言うよりも三重協奏曲のような音楽になる。都響はコンマスに矢部、チェロ首席に古川というソリストとしても活躍する名手がいるので、この曲を演奏するのに都響はうってつけだろう。
上原の演奏は、非常に安定感があって、技術的にも問題ない。もともとチャイコフスキーコンクールの覇者であるし、チャイコフスキーの持つ叙情性や技巧は問題ないだろう。(だから審査員の支持を得たわけであるし)。以前、ベートーヴェンの協奏曲を聴いたときと同じ印象だが、こっちの方が「やりたい・たのしそう」なオーラが演奏からも伺えた。
欲を言えばまだお互いに慣れていないのでオケとの間で完全に「調和」したとはいえない。だが、結構「競争」したスリリングな演奏になっていて聴いていて楽しかった。もう一回聴きたいなぁと思わせる演奏だった。
後半のプロコフィエフ交響曲第5番も小細工のない堂々とした演奏。ブラビンスの指揮は特に曲をいじることもなく、奇を衒わずに、もともと良くできた曲だからストレートに表現していて好感が持てる。こういう良くできた音楽にはこのような正統なアプローチで充分にオケを鳴らすことは非常に大事だろう。こちらも若干、荒削りなトコロがあったが翌日にあったサントリーの演奏会では解消されたんだろう。
結論、チャイコフスキーのピアノ協奏曲第2番はもっと聴かれてしかるべし!!