当たり前のようで当たり前じゃない。
- 作者: 網野善彦
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2008/11/06
- メディア: 文庫
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講談社から発売されている(いた)日本通史シリーズ(全26巻だったかな)。
古代からアクロバティックに読んで、7〜8割方読んだんだけど、以後、そのままになっていた。
それがこの度、文庫化された再び発売されることになった。(文庫化なのに1冊1000円以上するというのは…省スペースにはなって良いけどさ)
その間にも、中央公論社からかつての名著『日本の歴史』が文庫化されたり、岩波新書シリーズ日本近現代とか、小学館が、再び日本の歴史シリーズの刊行を開始したりと、まぁ、この手のシリーズを読破するのは大変なモンである。(小学館版は欲しいリストには入っているが全く読めてない…)
で、今回の網野善彦『「日本」とは何か』も、先に挙げた講談社日本の歴史シリーズの栄えある第1回配本。ちなみにこのナンバーは「00」ダブルオーである(笑)。
網野善彦は中世史研究において、農民以外のさまざまな職を持った人々が活発に活動していたことを明らかにして、それまでの静態的中世観から、一気に、ダイナミズム溢れる中世観を提示した功績は大きいと思う。(歴史プロパーじゃないからここまでいって良いのかという問題はあるが…)
この『「日本」とは何か』も実は「日本」という呼称自体が自明のモノではなく、もともと、「東」を意味するに過ぎなかった、地理的概念を国の呼称へとしたモノだということを明らかにしている点で、6〜7年前に読んだときは非常に斬新に感じたものだ。
いまでこそ、いささか網野の主張がやや前のめりに出ていなくもないな、とは感じさせるが、天武・持統天皇以降(7c〜)で用いられる「日本」という国号の歴史を考えれば、それよりも以前の我が国の歴史を、なんの疑いなく「日本の原始」とか呼んでしまって、(考えてしまって)良いのか?と言う問いかけは非常に重要だと思う。
今までのハードカバー版は重たくて読むのに大変だったけど、今回は文庫化されたので読みやすくなっているハズ。ちなみに今回は巻末に解説が付いてます。
ただ、これは学部時代の懇意にさせて貰った日本近世史の先生との話だけれど、このシリーズは当時の「若手」が執筆しているだけに、ちょっと一般読者が読むには視点が細かくなりすぎる嫌いがある、とのことだった。
確かに、中公版「日本の歴史」と比べると、微に入り細を穿つところもなくもない。
でも、それを差し引いても、この網野のヤツは面白いよ。