あれぐろ・こん・ぶりお 2楽章

備忘録も兼ねて。日記なんて小学生の時宿題で課された1年間しか続かなかったのですが、負担にならないように書けば続くものですね。

これがフレンチ・ピアニズム

東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団 第244回定期演奏会
ルイサダ宮本文昭ブラームス

2010年12月9日(木)午後7時開演

東京オペラシティ コンサートホール
指揮:宮本文昭
ピアノ:ジャン=マルク・ルイサダ

曲目 ブラームス / ピアノ協奏曲 第1番 ニ短調 作品15
ブラームス / 交響曲 第1番 ハ短調 作品68


 1985年のショパンコンクールで優勝したのはブーニンだったが、そのときに5位入賞を果たしたのがルイサダである。ただ、コンクールはやっぱり単なるきっかけなんだろう。その後の大手レーベルの契約状況などを見ても、今ではルイサダの方が世評が高いのではないだろうか?
 CDではいろいろ聴いていたけれど、初めてのルイサダ実演だ。管理人にとって今回の目的はルイサダにしては珍しい、ブラームスのピアノ協奏曲第一番である。個人的にこの曲で思い出深いのは何と言っても朝比奈隆伊藤恵のコンビが忘れられないし、また、オピッツの演奏も素晴らしかった。やっぱりオピッツクラスになると全然違うな(日本語おかしいけど)なんて思ったモノだ。


 さて、ブラームスだが、宮本の指揮の下、物々しい冒頭のテーマである。もっと颯爽としたテンポにするにかと思ったら、ずいぶんと重たい。フルにオケをならしているから、スケールは大きくなる。オケによる長い序奏が終わって、ピアノが入るのだが、最初の和音からして今までのピアニストと大きく違う。ピアノの数小節を聴いたときに、コルトーやフランソワが仮にこの曲を弾いたとしたら、やはりこのように弾くだろうな、というそんな弾き方だ。
 そこには強固な構造物を構築するような(バックハウスの録音)ではなく、テンポルバートをかけながら、時にメランコリックに時に激しくピアノを弾いていた。身長があるからか、打鍵の位置も高く、トリルの最初の音は非常に力強い。でも、ここでちょっとミスタッチが見られた。 それが一度ではなく、散見されたことから、多分、ルイサダはこの曲をそんなに弾かないのだろう。確かにイメージにないし、だから今回非常に興味があったわけなのだが。

 オケとの関係であったが、正直なところ「息は合ってない」(苦笑)。多分、リハーサル不足なのが一因なのと、指揮者が経験が浅く、ルイサダのようなタイプのピアニストではまだ対応しきれないのだろう。ティンパニとピアノが同時に出なければならないところでは完全にズレているし、アッチェレランドする箇所では時々、管が陥没しそうになる。(たぶん、アッチェレランドするのに、ルバートかけるから、なおさら分からなくなるんだと思う)

 それでも、第2楽章はまさに祈りのような音楽であった。こんなに詩情に溢れる楽章だとは思わなかった。ここはまさにルイサダの真骨頂。第3楽章は1楽章と同様な印象。

 ピアノは珍しくヤマハを使っていた。スタンウェイもベーゼンドルファーもあるのに、ルイサダヤマハなんだ。

 アンコールはバッハのフランス組曲から第5番。これもまた良い。


 後半の交響曲は「熱演」の類だ。
 宮本の指揮はおそらく小澤征爾に影響を受けているのだろう。指揮棒を使わず、指揮台での動作なんかは一頃昔の小澤のようだ。内容自体は、協奏曲と一緒である。多分、オーボエ奏者の時の感覚が生かされているのだろう。オケのプレーヤーの不満が溜まるような吹かせ方、弾かせ方はさせないのだ。充分音を出して大きな音楽を作っていく。そういうタイプである。
 さらに、オーボエ出身だけあって、木管の処理は非常に上手い。トゥッティの箇所でも木管が聞こえてくるのはさすがである。その分、弦の音程と精度にはもっとこだわって欲しいのだが…。

 もっとも、「熱演してるなー」とは思うが、それが感動までつながっては来ないのが惜しむべきところか。でも、そのあたりは場数を踏めば、だんだん練られてくるのかもしれない。

 ちなみに、いつもは目にしないような客層だった中年女性が結構多い。ルイサダ目当てか、宮本目当てか。