紀尾井レジデント・シリーズ I 葵トリオ(第2回)
呆れかえるニュースもあったけれど、コンサートの記録として昨日聴いた、紀尾井レジデントシリーズ。(を本当は残そうと思った)
日本人初のミュンヘン国際音楽コンクール優勝の葵トリオの演奏会で、シューマン、ショパン、メンデルスゾーンのピアノ・トリオを聴く。とてつもなく古いと言われるけれど、シューマンやメンデルスゾーンはカザルス・トリオの演奏があったり、多くの団体(3人だけど)の演奏に事欠かない曲だけれど、昨日の演奏会は「今だから聴ける」演奏だろうなぁ。と堪能しながら思った。
メンデルスゾーンは名曲だし、屋上屋を架すけれど、疾走感と明るいながらも寂寥感を感じる演奏が直球だ。たとえばアバドの交響曲全集の演奏もそうした魅力が前面に出たものだけれど、葵トリオの演奏もストレートに青春感というか若々しさが高度にアンサンブルに結実している。
たぶん、これは3人の同質性と方向性が近くて、なおかつ、20代ならでは。去年、アルゲリッチとマイスキーのデュオを聴いたけれど、「あのレベル」の人生の達人になってくると、音楽で表現しようとするものは変わってくるだろう。
しかし「若書きの書」は若いうちでないと書けないように、今回のメントリも若いうちじゃないと弾けないだろうなぁ,と思った。シューマンもショパンも良かったけれど、今の3人の直球ど真ん中に、芯から捉えた感が強かったメンデルスゾーンで大変良かった。
シューマンも、もちろん良かったけど、たぶん、シューマンはもっと大人になったら渋い演奏が聴けるようにも思う。上手いのはそうなんだけれど、単純に上手いだけならイイってもんじゃない、というとても当たり前なんだけれど、その当たり前さをまざまざと印象づけるような演奏だった。(だから年齢や・方向性もふくめた3人の“息が合う”っていう条件で継続的に音楽をやるというのは奇跡的なんだろうな,と思う次第)