N響 第2004回 定期公演
ヨハン・シュトラウスII世/ポルカ「クラップフェンの森で」作品336
ショスタコーヴィチ/舞台管弦楽のための組曲 第1番 -「行進曲」「リリック・ワルツ」「小さなポルカ」「ワルツ第2番」
ショスタコーヴィチ/交響曲 第13番 変ロ短調 作品113 「バビ・ヤール」*
指揮 : 井上道義
バス : アレクセイ・ティホミーロフ* ※
男声合唱 : オルフェイ・ドレンガル男声合唱団*
井上道義&N響のショスタコーヴィチ「バビ・ヤール」ほかのプログラム。
ちょっと言葉が出ないくらいの演奏者。先月は都響でジョン・アダムズが「事件」だったが、今日のショスタコーヴィチも間違いなく事件である。13番はオケの機能性、バス、男声合唱いずれも高水準であり、さすがはN響定期。
N響とはまだ演奏の機会はあるが、定演はこれがラスト。10番、11番と深まっていく曲を両者で演奏してきて最後に13番「バビ・ヤール」である。自分も都響/インバルを聞きそびれているので、生で聞くのは初めて。期待が高まるというもの。
ヨハン・シュトラウスのポルカ「クラップフェンの森で」はショスタコーヴィチプロなのになぜ?と思いきや、もとはパヴロフスクなのだそうな。
ウィーンっ子が感じるパヴロフスクってこうなんだ。とそのギャップが面白い。ニューイヤー・コンサートでも出てきた鳥笛が微笑ましい。ショスタコーヴィチの舞台管弦楽のための組曲 第1番は曲が曲だけに非情に聞きやすい。前プログラムならもっと積極的に採り上げられても良いような。親しみやすいメロディラインだった。サックスやアコーディオンも出てきて視覚的にも面白い。
ああいうとき、呼んでくるんだろうか?
後半の13番「バビ・ヤール」は1楽章から気合い充分。鐘と金管がおどろおどろしい雰囲気を讃えている。それに続くバス :独唱のアレクセイ・ティホミーロフも素晴らしい。オルフェイ・ドレンガー (スウェーデン王立男声合唱団)もキレイではない上手さだ。プログラムに載る歌詞の邦訳は亀山郁夫だし、N響、ソリスト、合唱、邦訳と贅沢なことこの上ない。
ただ、詩の内容が内容なので字幕をつけて欲しい気もする。意図しない世相のため、この曲を受容するコンテクストも変化しているし、奏者・聴衆ともにこの演奏会に向かう想いもあって、特別な演奏会になった。
2月8日(木)?にFM放送があるという。これもまた大変楽しみ。ともあれ、日本のショスタコーヴィチ演奏史上の一つの到達点と言うべき演奏じゃないかなぁと思った。(日比谷での全曲演奏会と共に)
どうなんだろう、記録として残るんだろうか。残すべきだと想うんだけど。
こうしてみると朝比奈=ブルックナー、渡邉=シベリウス、山田一雄=マーラー、小林=チャイコフスキーとそれぞれ特別な想いを持つ指揮者=作曲家の系譜に井上道義もいて、それが日本のクラシック音楽の演奏・受容の歴史を豊かにしたことは素晴らしいことだと想う。
遠征したいなぁ。