あれぐろ・こん・ぶりお 2楽章

備忘録も兼ねて。日記なんて小学生の時宿題で課された1年間しか続かなかったのですが、負担にならないように書けば続くものですね。

彩の国シェイクスピア・シリーズ第34弾『ヘンリー五世』

 さいたま芸術劇場「(シェイクスピアシリーズ)ヘンリー5世」千穐楽を観た。
 同じ劇場で観た「ヘンリー4世」から6年が経っているという。もっと最近に観たように思ったけれど時が流れるのは早いなぁ。
 あのときは吉田鋼太郎演じるファルスタッフが圧巻だったが、今回はハル王子からヘンリー5世に成長した松坂桃李が役としても、また役者としても大いに成長したことを実感した芝居だった。芝居を観ながら「いやー、うまいなぁ・・・」という心の声がため息と共に出そうになる感じとでも言うのかな。
 名君・ヘンリー5世だが、そこには強さと弱さを合わせた一人の青年という、ある意味で等身大ながらも深みのあるキャラクター(年齢も30歳くらいでちょうどピッタリ)を松坂は見事に演じきっていたと思う。
 ハル王子(ヘンリー4世)を演じていた頃に松坂桃李をTVで観ていた時は思わなかったが、実際に舞台を観て、fineboysのモデル出身だけあって、その立ち姿が身体のバランスもとれたイケメンなんだと初めて実感したが、今回は(戦隊出身イケメン俳優で終わることなく)この年代の俳優として随一の演技力を持った俳優に「なった」と思った。
 間違いなく彼自身の内省と努力の結晶なのだろう。よく「カメレオン俳優」という言葉が使われるけど(一人歩きしているし、安易に使われるその言葉は役者に対する浅い理解でしかないように思うんだけれど)普段の松坂からまさに「一つの理想型としてのヘンリー5世」に見事な変貌を遂げているように感じた。
 話自体は非常にハッキリくっきり「分かりやすい」舞台になっていた。舞台装置や演出もオーソドックスで場面転換も分かりやすい。その分「ヘンリー4世」の時のような話の奥行きとか、ハッとした驚きは減じたが、ヘンリー5世という人物のポートレートとアクションという視点からすれば非常にエンターテイメント性が高い舞台だったと思う。
 最後に舞台奥へ消えていく松坂ヘンリーをコロスの吉田が見送るのだが、舞台上に2人だけになるその空間があたかもハルとファルスタッフとが追憶の中で交叉するようにも思えるような(まさにコロスのセリフ通り「想像して下さい」!)演出であった。
 非常に見応えがあった芝居である。(アジンコート演説はカットされているけど)

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ヘンリー5世