あれぐろ・こん・ぶりお 2楽章

備忘録も兼ねて。日記なんて小学生の時宿題で課された1年間しか続かなかったのですが、負担にならないように書けば続くものですね。

パシフィックフィルハーモニア 第156回定期のことなど

シューベルト交響曲第5番 変ロ長調
シューベルト交響曲第9番 ハ長調 「ザ・グレート」

指揮:外山雄三

 

 今さらながら、先日のパシフィックフィルハーモニア東京の演奏会について書いてみる。
 10年ぶりくらいの外山雄三と言うことで聴きに行った。御年92歳。大阪交響楽団は定期的に振っていたが在京オケはご無沙汰である。ところが、開始前に楽団長がマイクを持って登場すると、ゲネプロ後、体調が悪くなったという説明を受ける。シューベルトの5番は指揮者ナシ。休憩後の9番のみ指揮するという。出てきた瞬間にこれはあるなと思ったら、思った通り。
 かくして、指揮者ナシによるコンサートが始まった。
 そういえば、ゲネプロで体調不良というのは2005年に都響/フルネでもあったな、と思いだした。この時は伊藤惠のモーツァルト・ピアノ協奏曲(だったか?)とデュカスだった。凄い集中力で弾ききっていたが、今回も同様。
 外山の最近のCDだったらもっと遅くて良いはずだけれど颯爽と音楽が流れる。音量もしっかりとしていてメロディがハッキリしていてよい。

 後半の9番は袖からスタッフ2名に介護されて登場。リハからそうだったのか(もともと足腰が弱っていたのか)、体調不良なのかは判断がつかない。でも、杖も車いすもないから、普段はもうちょっとしっかりしていたのだろう。だとすると危ないのでは?指揮台でなにやら冗談を言っていた様子。音楽自体は、先に発売しているチャイコフスキーのCDみたいにゆったりと、でも全てがゆっくりではなく結構あっさりインテンポのところもあった。で、伸びやかに、響きに丸みがある。これも「CDみたいな感じでシューベルトやるとこうなのか」と思った。
 第2主題から着席。大丈夫か?第1楽章は腕が動いていたが、それ以降は左手が時折指示を出すくらいで右手は2階席からだと動いていないように見える。手首だけで振っていたのかも知れないけれど、それは分からない。音楽は大らかに進行している。でも豊かになりっぱなしで、弱音のニュアンス的なモノはない。

 第3楽章も音楽のエネルギッシュさとは対照的に外山は動けない。時折、うしろの手すりに左手を掴んでバランスを取っている。立ち上がろうとしているのか、そうでないと体制が維持できないのか良く分からない。意外とひやひやする。4楽章に入る前に、コンマスに何か話しかけていた。演奏自体はスケールを伴い、かつ、豊かな響きで進んでいくが、第1主題が終わったくらいでタオルを取り出したところで、第2ヴァイオリンの最後列の人が異変に気付き、ステージ袖からスタッフへ⇒スタッフ2名が指揮台へ駆け寄り、外山の意識を確認していた様子である。客席最前列に座っていた楽団長がステージへ向かい、同じく男性スタッフがステージの飛び乗った。袖から車いすが用意され、介抱されながら、車いすに乗って袖へと入った。
 かなり衝撃的な場面なんだけれど、オケは進行していた。おそらく、本番前にどんな場合でも音楽は止めないという打ち合わせができていたものと思われる。演奏自体はそんなところで、外山が元気であれば落ち着いて聴けたが、あまりに衝撃的な場面に全て持って行かれた感じである。
 終演後、外山は袖から2度ほどカーテンコールに応えていたので、命の危機ではなさそうだ。疲労から来る血圧の問題か?正直、本人がやると言ってもここはドクターストップをかけるべきであったと思う。あるいは、初共演で通常の指揮者と同じ、3日のリハーサルというのもマズかったかも知れない。
 普通ならあり得ない状況でも弾ききったオケには健闘を讃えるけれど、いろいろ考えたもの事実だった。