あれぐろ・こん・ぶりお 2楽章

備忘録も兼ねて。日記なんて小学生の時宿題で課された1年間しか続かなかったのですが、負担にならないように書けば続くものですね。

人生初の「内田光子体験」

モーツァルト:ピアノ協奏曲第25番 ハ長調 K. 503
シェーンベルク:室内交響曲第1番 作品9
モーツァルト:ピアノ協奏曲第27番 変ロ長調 K. 595

 人生初の内田光子サントリーホールで聴く。
 マーラーチェンバーO.とモーツァルトの25番、27番。あと、シェーンベルクの室内交響曲1番。
 何から書こうか、今でも分からないけど、とにかく凄かった。
 25番はオケから始まるけれど、あの人数でちっとも音の薄さを感じさせない。何という迫力だろう。それを引き継ぐ内田光子のピアノは柔らかく、でも、芯はあり、それでいて決してうるさくならない絶対の境地だ。なんか聴いていてうまく言い表せないかと思ったけれど、「幽玄」っていう言葉が今の自分の語彙では限界だ。今までどのピアニストからも聴いたことのない音である。

 27番はもともと曲が彼岸にいっているような曲だからいっそう際立っている。このピアノの音は何なのだろうと考えてしまったけれど、当たり前だけれど打鍵が決定的に違うのだ。2楽章と3楽章で。展開部と再現部で…。
 書の世界で近代詩文書などを目にするとき、落筆の位置があげられるけど、それによって絶妙な滲みがその周りに出てくる作品がある。それと同じような世界で(だから幽玄)、その一方で華やかではないが軽やかな肩の力が抜けた音もある。内田光子の視線の先には一音一音でどんな音を出すべきかが明確に見えている。これは凄いことだ。間違いなく彼女のピアニズムは歴史上の巨匠たちに連なっていて、一世一代の、彼女だけの芸であろう。
 この音楽を同時代に聴けることは素晴らしい。
 なお、後半から上皇ご夫妻も聴きに来られていた。とても素晴らしいコンサートだったので、きっと帰りの車中でも楽しく会話が弾まれたであろう。
 軽く旅行できてしまうチケットではあったが聴けたことが一生思い出に残るような体験だった。